「協働」とは、第1章でも述べたように、お互いの立場を尊重した対等の関係で実施されるべきものです。
この点について十分に吟味されないままに「協働」を進めると、NPOが単なる「下請け団体」になってしまいかねません。よって事前にこの点に関してしっかりとした協議をし、ルールや条件の確認をしておくことが必要です。協働とは、「NPO」「行政」双方の歩み寄り、極端に言うと「変革」を前提とした協力活動です。そうであるためには必要な条件がいくつかあります。(1) 行政側の必要条件
行政は、「NPO」とその支援の意義・方向性を熟知し、その目的をしっかりと把握する必要があります。またその意義・方向性に関して行政としての係わり合い方を決めることも必要です。
例えばNPOが出来ることと出来ないことのうち、NPOが出来ることに関して行政はなるべく手を出さない。また、NPOとの公平な接し方を心がけます。また、行政というのは権力機関でもあるため、ある範囲においてはNPO(民間の組織)と協働することが難しいこともあります。
例えば、税金を集める場合、滞納すれば権力機関としての対応が行なわれます(告発など)。それゆえ公平、公正でないと大変なことになります。
こうした点を踏まえ、行政機関もどの部分を協働が可能か、見直す姿勢も必要条件となります。
また、行政側、NPO側に双方にいえることですが、パートナーシップとはお互いの差を確認した上で共通の目的を達成するために、寛容さも必要です。(2) NPO側の必要条件
NPOは、行政の仕事を理解し、公共サービスについて学ぶことが必要です。
独自のスキルを自覚しそれを磨くこと、各ミッションについて粘り強く実施することとそのような環境作りを心がけること。そして住民の参加を促し、人々の多くの意見を代弁出来る、そういう能力を高めていくことです。
それから重要なのが、自分自身が自立していること。これは財政的にも、行動指針的にもいえるところです。
(行政との)お互いの自主性を尊重し、目標を共有していること。行政に対し、あくまで対等な立場にたって意見し、議論することです。行政側にも「下請け団体」と思わせず、かといって「圧力団体」であることも「協働」にとっては弊害以外の何者でも有りません。そして、他NPO・行政組織とのネットワークを有するかどうかも重要といえます。(3)事前の仕組みづくり
協働を行うための方針を明確にし、NPOと行政のお互いが取り組む姿勢や目的を明らかにしておく必要があります。
滋賀県では、「県民の社会貢献活動促進のための基本的な考え方」
【参考資料「協働ネットしが」】http://www.npo-shiga.net/about/basic.htmlで協働についての姿勢や目的が示されていますが、実際に活動を行う際にはもっと実践的なルールを策定しておくほうがいいでしょう。
事業への参加機会が誰にも公平であるように、協議の場を設定し、協働がなぜ必要か、その根拠を明確にしておきます。行政は、施策を住民にいかに分かりやすく説明出来るか、そのための方策も必要です。(4)情報公開と共有
問題となる事柄に対し、共通の認識をもてるよう、ある程度の頻度をもってお互いの情報を出し合い、「協働」の目標を設定することが重要です。
(5)責任分担(役割分担)
共通の目標の達成に向けて、お互いが尽力するジャンルを決め役割分担を明確にしておくことが必要です。
(6)説明責任
目標の達成に到るまでの計画、そのための企画、工程を作成し、それらに加えて「協働」におけるルール(契約や条件)をまとめた協定書をお互い合意の上作成すること。お互いが実行している事柄についてお互いが把握出来るように管理し合っていくことが重要です。また、事業に関わる関係者と第三者(地域住民など)に対して説明責任を果たしていくことが重要です。(プロセスの管理)
NPOと行政の関係は、対等であることが必要であると考えます。一方が一方に事業を「委託」する、「依頼」する、「受託」する、「下請け」するのではなく、二つの(あるいはそれ以上の)組織が「協働」するということをよく理解していることが必要です。
以下に「NPO」と「行政」の係わり合いについて重要と思えるキーワードを選出してみました。(1) 対等な関係
行政が自らの下請けとしてNPOを使うという発想ではなく、「NPO」の特性を認めて、自主性を尊重し、あくまで対等な関係を構築すること。
(2) 相互理解
互いの特性を理解し、尊重し「協働」することで、相乗効果が生み出せるように心がけること。
(3) 関係の公開性
「行政」と「NPO」の関係は外部に対して開かれている必要があります。その関係は積極的に情報公開し、他NPO・行政組織の協働関係への参入の仕組みも確立され、だれでも参入出来ること。
(4) 関係の時限性
関係の終了する時期を明確にし、惰性的な関係継続を廃すること。 「行政」との関係が特定NPOにとって既得権化につながらないようにすること。
(5) 共通の目的
「立場が違う同士でも協力し合うことが出来る」
これはある意味協働の本質を物語る言葉ですが、つまるところ行 政とNPOは同じ立場に立つことはありません。しかし、同じ目的のために自分たちしか出来ない努力をすることができます。
立場が違うことを認識すること、しかしながら同じ目的を持つこと。
協働の目的は、あくまで地域住民・「NPO」のニーズにどのように応えていくのかということにあります。それにおいて、サービスの提供者である「行政」と「NPO」が互いに自立性を尊重しながら、議論を尽くす姿勢が重要です。「行政」における「意識改革」・「NPO」における「自立し続ける心」があってはじめてその姿勢を貫くことが出来るといえます。
「行政」は存在時点ですでに一定の基準をクリアした組織といえます。しかし「NPO」は、その設立趣旨から様々に存在し、組織としての成熟度なども各団体ごとに大きくばらつきがあると言っていいでしょう。
その中では無論協働に適するNPOと適さないNPOがあります。 以下にそのような「協働するNPO」としてチェックするべき条件を挙げてみました。(1)営利を目的とする団体でないこと。 (構成員に利益を分配しない)
(2)宗教活動や政治活動を主目的にする団体でないこと。
(3)特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦、支持、反対することを目的とする団体でないこと。
(4)特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として事業を行う団体でないこと。
(5)特定の政党のために利用する団体でないこと。
(6)特定非営利活動に係る事業に支障が生じるほど「その他の事業」(収益事業)を行う団体でないこと。(特定非営利活動に係る事業の会計から区分して経理することが必要で、その収益は特定非営利活動に係る事業に充てること)
(7)暴力団、暴力団又は暴力団の構成員若しくはその構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制下にある団体でないこと。
前項でも言ったように、協働の目的はあくまで地域住民・「NPO」のニーズにどのように応えていくのかということにあります。その観点から見た場合の、適切・不適切を判断することが必要です。ここまで読み進めていただいた方の中にはもういらっしゃらないと思いますが、公共サービスは行政が独占的に担うものと意識してはいないでしょうか。
また、NPOの活動については、行政の施策に立ち入らないものといったイメージを抱いていませんか?
そういうイメージを持っていると協働ということに違和感を持つ職員もいるかもしれません。一方、NPO活動は単なる行政の下請的、補助的活動に過ぎないものと考えている職員もあるかもしれません。
県内のNPOは、小規模かつ脆弱なものが多いことから、現状では行政や企業と対等とは言い難いかもしれません。しかし、これからNPOが行政とは違う発想で地域に密着したきめ細やかな各種のサービスを提供し、活動が活発化していくようになれば、それらの活動が社会で果たす役割について、私たちは認識を新たにし、さらに深めていくことになるでしょう。今回の実証事業を振り返って、「協働」に当たって「NPO」に求められた要素は、「自主的であること」「積極的であること」「共同で事業をする自覚をもつこと」でした。
それは引いては延いては地域の活性化を見据えた活動が出来たかということに繋がります。